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【KGマガジン】KGモーターズが1人乗りEV「mibot」で目指す世界とは

#01 くっすんガレージは『KGモーターズ』に

筆者は以前所属していたデイトナ編集部で“くっすんガレージ”の企画を立ち上げから担当。そんな経緯もあり、『KGモーターズ』のミニマムモビリティ開発プロジェクトについてはKGマガジンという独自メディアの立場で、プロジェクトの内面(というか裏側)を探ってやろうと決めた矢先の4月某日、KGモーターズの活動拠点のひとつで行われたプロジェクトメンバーによる勉強会に参加させてもらう機会を得た。電動ミニマムモビリティを通して“今日より明日がよくなる未来を創る”というミッション達成を目指すうえでKGモーターズとして崩してはいけない、コンセプトや考えを共有する場。その輪の中心にいるのはCEO楠一成(くっすん)である。

『くっすんガレージ』としての動画投稿をメインに活動していた頃から、くっすんを知る身としてはCEOとしてプロジェクトメンバーを引っ張る姿には感慨深いものがある。といっても動画クリエイターからスタートアップ企業への転身を喜んでのことではない。動画のネタとしてクルマやバイクのカスタムに取り組んでいた時から、メカの知識や新技術に対する探究心に加え、「電動モビリティが当たり前になる社会」という未来に向けたビジョンをくっすんはすでに持ち合わせていた。あと天才的な閃きと壁を打ち破る突破力も。だから「ミニマムモビリティを作る」とプロジェクト立ち上げを宣言した時も驚きはなかった。

感慨深いと感じたのは動画クリエイターという枠組みを超え、KGモーターズとして新たなスタートを切った中で、わいざん、やすま、ぽこみちという従来メンバーだけでなく、専門知識を要する車両開発や事業開発分野で活躍してくれる新たな仲間を迎え入れたプロジェクトメンバーを引っ張るくっすんの姿勢に頼もしさを感じたからである。

天才的な閃きと行動力を持つくっすんだが、その天賦の才は時にメンバーや視聴者たちをも振り回してきた。本人としては頭の中の思考を日々アップデートしているだけのことだが、彼の脳内プランを全て把握しきれる訳ではない周囲の人間にとっては突然の方針転換とも感じてしまう。ただ、今までそれが大きな軋轢を生まなかったのは、くっすんの特性も性格も熟知した気心の知れたメンバーが受け止めてくれたから。突然の閃きに驚きつつも、メンバー同士の掛け合いの中で繰り広げられるドタバタ感が視聴者を楽しませる要因にもなっていたのだ。しかし、これからはそうはいかない。新たな仲間が増え、社外の協力先たちの力を余すことなく結集し、ゴールへ辿り着くための推進力にする。何よりも『KGモーターズ』に期待して、ミニマムモビリティというプロダクトを待ち望むユーザーに対しての責任がある。そのことを誰よりもくっすん自身が自覚し、努力している姿を見ることができたのは勉強会開始早々に得られた収穫のひとつである。

↑プロジェクトメンバーが集まって行われた勉強会。参加メンバーが自由に意見を出し合うミーティングで、輪の中心にいるのはくっすん。KGモーターズのCEOとしてプロジェクト成功のためにメンバーを牽引していく役割が求められている。

今、世の中の人がKGモーターズに抱く感情は『半信半疑』

ここからは勉強会で語られたくっすんの言葉から『KGモーターズ』ブランドやミニマムモビリティの現状分析と思い描く未来予想図を紹介しよう。2023年にコンセプトモデルの製作から始まった車体開発は2024年度中に公道走行可能なモニター用車両の完成を目指している。同時に広島・東京の優先予約エリアでは実車展示を予定。2025年度に300台の量産&販売開始。そして2026年度の本格量産を目指し、プロジェクトは着々と進行中。広島・東京の優先エリアでの予約受付も開始しており、ミニマムモビリティに関して多くの期待や要望も寄せられている。その声を踏まえたうえでの、くっすんの思いとは?

―くっすん:ミニマムモビリティという乗り物を作る中で競合となる他社・モデルは当然ある。クルマ作りで実績のあるメーカーはユーザーに対して安心感や信頼性を与えられており、KGモーターズとしても“信頼性を高める”という点は努力し続けないポイントだと思う。また中国系ブランドは国策としてのシナジーを活かしたマーケット分析など、絶対に売るんだという攻めの姿勢を感じる。メーカーならではの圧倒的なコスト競争力もかなり脅威ではある。

―くっすん:そんな競合たちとの比較をしつつ、すでに受付開始した予約申込者の情報を分析してみると低価格を打ち出すことで惹きつけられるユーザーの数には限度がある。KGモーターズの強みは『ワクワク感とデザイン性』であり、ライフスタイルを充実させるために面白いものを選びたいという思考を持った人に届けるためのブランディングを進めるべき。もちろんコストを抑えたいという要望を持っているのも確実なので、ターゲット層を文字で表現するなら…『ワクワクしたい(お金をかけずに)』と思っている人。考えるべき優先順位は①ライフスタイルをより良く出来るか、デザイン的にも先進的なものになっているか。そのうえで付加価値として②コスト的なメリットもある、ということ。そこで今後は、展示会場などの場で価格だけでアピールするのを禁止します!(笑)

―くっすん:もうひとつ、現状を分析すると無視できない絶対的な要素として、世の中の人がKGモーターズに抱いている感情は「半信半疑」だと思う。メーカーや大企業が持つ信頼性と比較して、KGモーターズには見た目はワクワクするし、楽しそうだし、乗ってみたいなという期待感があると思う。でも本当に安全性は大丈夫なのか? 壊れたときの対応は? 話題性だけでなく本気でモビリティを作ろうとしているのか? そもそもちゃんとやり切れる(作れる)の? という不信感もあることは間違いない。ただ、逆に捉えればこれはチャンス。例えば衝突実験の様子を少し公開したときにも「原付ミニカーでここまでやるのか!」というポジティブな反響があった。不安要素を解消することで、すでにある期待感に加えて、安心感というプラス要素を追加することができる。この状況をどう活かしていくのか、どのようにアピールできるか、というのは今後に向けてのポイントになると思っている。

この先のAIとの連動は必須事項。ミニマムモビリティをペットのような存在にしたい

―くっすん:最近のトレンドを踏まえれば、AIの進化が今後の自動車やモビリティ分野に大きな影響を与えるのは間違いないと思う。電動化はもちろんのこと、レーザーセンサー技術の開発スピードも早いのでAIと組み合わせることで自動運転技術も進化していく。KGモーターズのプロジェクトとしても、ミニマムモビリティが完成したその先のステップとして自動運転技術の搭載を見据えている。そしてもっと先…自分の中での構想としてはミニマムモビリティが、なんて言うかペットのような存在になってくれたらな、と(笑)。

―くっすん:一緒に出掛けて遊べるペットのような、毎日の移動にワクワクを与えてくれる存在になるためにAIを活用できたらいいなという構想は持っている。

―くっすん:ミニマムモビリティでKGモーターズが目指す最終的なビジョンは『移動が最適化された未来。小さな乗り物が市民権を得た社会(世界)を作ること』。コンパクトな1人乗りEVという時代やニーズに沿ったスペックという意味での最適化だけでなく、移動という行為自体を楽しくさせる選択肢としてミニマムモビリティが当たり前のように走っている光景を想像すると、とてもワクワクしてくる未来が描けると僕は思っている。

 

【KGマガジン】
取材・編集担当/野本和磨(nomo.chant.)
元「デイトナ」副編集長。デイトナ誌面でKGモーターズの前身“くっすんガレージ”の活動を紹介してきた経験を元にミニマムモビリティ開発プロジェクトを紹介する案内役。“スタートアップ企業”としての企業活動だけでなく、その根底にある「乗り物好き」「EVで未来を遊ぶ」「ワクワクしたい」という趣味人としての遊び心やKGモーターズが考える『ミニマムモビリティのあるライフスタイル』を紹介していく。

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